「全品300円〜」という驚異的な最安値を掲げ、連日行列ができる激安古着店『チャッペルル』。激安のカラクリは企業秘密だが、このインタビューでは、店長・キヌガサさんが「激安」を「ビジネス」として成功軌道に持ち上げた、ハード過ぎる日々と不屈の鬼メンタルにふれていきたい。年間2日の休みで10年以上働き続け、7〜8年は給料ナシ。それでも諦めず、這い上がってきた今日までのこと。
―店長までの経緯を教えてください。
「チャッペルル」は今年でオープン10周年を迎えるのですが、会社自体は1999年創業です。僕が入社した時、「チャッペルル」は別の店名で展開していました。元々、激安の古着屋で、学生の頃からお客さんとして足を運んでいて、19歳からアルバイトとして入って、社員として働き始めました。
―「全品300円〜」という価格はどのように設定したのですか?
アメ村で390円均一ショップが流行っていた頃、390円に勝てる「380円」という価格帯を最安値に設定したことがキッカケです。
ーなぜこんな激安価格で販売できるのでしょうか…?
そこはちょっと企業秘密です(笑)でも正直、「全品300円〜」はどこのお店でも出来ると思います。逆にうちの店は、この価格帯で経営が成り立つ「薄利多売」の販売方法しか知らないので、この価格以外の付け方が分からないんです(笑)
―正直なところ、最初から経営は成り立っていたのでしょうか?
いや、全然成り立っていなかったです(笑)入社した頃からずっと売上がめちゃめちゃ厳しくて、年間363日働いても、7〜8年くらい給料がなかった時代もありました(笑)それで、家賃が払えなくなってしまって、この店の床に、段ボールを布団代わりに敷いて、寝泊まりしていました。
―え!この店の床ですか!?
はい(笑)冷暖房もお金がかかるから使用できなくて、冬はダウンを着込んで寝て、朝は寒さで目が覚める。夏は暑いし、当時は気持ちよく目が覚めたことがなかったですね(笑)長きに渡って、常に経営はピンチでした。
―商品の状態もすごく良いですよね。
販売する古着のケアには、とても力を入れています。仕入れた後、洗濯はもちろん、シワを伸ばしたり、ボタンのほつれを整えたり、その服を一番綺麗な状態でお客様に着ていただけるように努力しています。「値段は安いけど、汚いものを置いている」と思われるのは、絶対に嫌なんです。
―常に新しい商品が並んでいますが、仕入れはどのように行っているのですか?
スタッフの瑠輝斗・奥さんと一緒に、週1で国内にて仕入れをしています。商品はすべて、1点1点ハンドピックしています。
―開店前の行列も「チャッペルル」ならではの光景です。
5〜6年前に有名なYouTuberの子が紹介してくれたことがキッカケで、一気にお客さんが増えたんです。動画やSNSの影響力の強さを実感しました。あと行列は、単純に店の狭さもあります(笑)「店舗拡大しないんですか?」ってよく聞かれるのですが、予定はありません。行列も宣伝のひとつですし、僕自身、狭いところが好き(笑)それに、厳選した商品を30分くらいで見られるお店の方が、好きなんです。広い店でたくさんの商品を一気に見ると、5分くらいでしんどくなってしまうし、店を広くした分、いらない商品を置かないといけなくなる。
お客様は「欲しいもの」しか見たくないと思うし、全世代の永遠のニーズである“安くて良いもの”をこれからも提供し続けたい。何より、「チャッペルル」が大切にしている“接客”が、疎かになってしまう可能性もあります。近い距離でお客様と会話をして、“スタッフに会いに来る”という関係性もしっかり築いていきたいんです。
―今の手応えを掴むまでどのくらいかかりましたか?
それこそ、15年くらいは下積みだったと思います。普通に生活できるようになってきたのが、そのくらい。今、色んな新しい服屋さんがオープンしています。服屋さんって始めやすい商売だと思うけれど、続けることは、難しい商売なんですよね。
―今日まで続けることが出来た秘訣はどこにあると思いますか?
仕入れや留守中の管理など、店を任せられるスタッフや家族が出来たことがかなりデカいです。昔は仕入れを週2で行っていて、すごく大変だったんです。仕入れ前日の深夜3時くらいまで店の準備をして、2時間寝て、朝に出発して、昼まで仕入れをしたあと、昼からお店を営業して、また夜中の12時くらいから仕入れに出かけて、朝7〜8時くらいまで。商品ピックアップをしていました。
今は仕入れを週1に減らして、一緒に仕入れに行けるスタッフもいて、仕入れで外出している時間も、店を営業してくれるスタッフがいる。これまで色々な辛いこともあったけど、ここで逃げたとしても、人生は何も変わらないという思いで、自分を震い立たせてきました。何も持っていない自分が唯一持っていたのが、「服が好き」という気持ち。それ
しか持っていないのなら、ここで成功してやるぞ!っという気持ちで必死に動いていました。
だから、根性は誰にも負けない自信があります(笑)まだまだ成長過程だと思うし、弱音を吐くときもあるけれど、今はみんなが支えてくれるので心強いです。